Flute Recital 2022 (interview-I)

清水理恵フルート・リサイタル

~バッハ 無伴奏ヴァイオリン作品とともに vol.3 ドイツへの旅~

【日時】2022年7月31日(日) 【第1部】14:00開演【第2部】16:00開演

【アーカイブ配信】終演の約1時間後 ~ 2022年8月28日(日) 19:00

【会場】パウエル・フルート・ジャパン アーティストサロン“Dolce”

【出演】清水理恵(Fl) 山本弥生(Pf)

【料金】●各部(入替)一般¥4,000/会員¥3,000/会員(学生)¥2,000

            ●(1部2部通し)一般¥6,000/会員¥5,000/会員(学生)¥3,000

PROGRAM

【第1部】

 

クロイツァー/フルート・ソナタ ト長調 Op.35(Fl.Pf.)

 

シューマン/お伽話の挿絵 Op.113(Fl.Pf.)

 

バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006 (Fl.solo)

 


【第2部】

 

メンデルスゾーン/ロンド・カプリッチョーソ ホ長調 Op.14(Fl.Pf.)

 

シューマン/子供の情景 Op.15(Fl.Pf.)

 

清水研作/独奏フルートのためのパッサカリア《新曲初演》(Fl.solo)

 

メンデルスゾーン/ヴァイオリン・ソナタ ヘ短調 Op.4(Fl.Pf.)

PROFILE

清水理恵(Fl) 

桐朋学園大学卒業後渡米。ボストン大学大学院にて当時のボストン交響楽団首席フルート奏者ドリオ・ドワイヤーに師事。同大学院修士課程修了。 在米中よりソリスト・室内楽奏者として幅広く活動する。帰国後「現代室内楽コンクール競楽II」第3位及びフォルテ・ミュージック賞受賞。フランス、アメリカ、中国の音楽祭やコンヴェンション、作曲家会議、大学等に招かれ、新曲初演やコンサート、マスタークラスなどを行う。 


2012~18年リサイタル・シリーズバッハ:無伴奏チェロ組曲に魅せられて」全6回を企画開催。2018年秋よりリサイタル・シリーズ第2弾「バッハ:ヴァイオリン・ソナタ&パルティータとともに」を始動した。2020年に開催したコンサート「邦人作品の歩み」では、加藤元章氏と共演、特定非営利活動法人映像産業振興機構より助成を受け、Veritas Music Channelにて動画配信を行う。 


また、ドルチェ・クラシックチャンネルにて、清水研作「日本の歌・世界の歌」PtFour(プラチナフルート4本のカルテット)、クーラウのデュオOp.10, 39, 80, 81 (共演:加藤元章)などを配信中。 


CD録音としては、「Three Water Colors」(チェロ:川上徹、ピアノ:鈴木美奈子)、清水研作作品集「海」(共演:清水信貴、時任和夫)、清水研作「日本の歌・世界の歌」(ピアノ:石橋尚子)などがある。 桐朋芸術短期大学及び新潟大学講師。中国綏化音楽院客員教授。ドルチェ・ミュージック・アカデミー講師。

山本弥生(Pf)

東京芸術大学卒業後,渡独。シュトゥットガルト音楽大学大学院を修了し、ソリストコースに進む。ドイツ国家演奏家試験合格。その間、アメリカ・インディアナ大学に学ぶ。


インディアナポリス・マティネー・ムジカレ、グランプリ受賞。


在学中より、ドイツ各地にて、帰国後もソリスト、アンサンブル奏者として演奏活動を行う。これまでに、東京芸術大学附属音楽高校、沖縄県立芸術大学非常勤講師を務める。小林仁、故和田邦江、故アンドレ・マルシャン、故ジョルジュ・シェボックの各氏に師事。

INTERVIEW

フルートならではの表現、創造の楽しみ

2012年から続けてきたリサイタル・シリーズ「バッハ:無伴奏チェロ組曲に魅せられて」を終え、現在は第2弾である「バッハ:ヴァイオリン・ソナタ&パルティータとともに」を継続中の清水理恵。昨年秋にアクシデントに見舞われるも、来る7月に控えた次回公演に向けて、現在は調整の真最中だ。

自身にとっての挑戦という意味も込めた、バッハのヴァイオリン・ソナタ&パルティータをフルートで演奏するという試み。一つひとつの公演が探求であり、また楽しみや発見に出会う“旅”でもある。そんな彼女が考える、バッハ作品やドイツ音楽を演奏することとは――? さらに、後半では作曲家で夫でもある清水研作も加わり、リサイタルでも演奏される新作、また作品の世界観についてなど、対談形式で聞く。

インタビューは、夫妻こだわりの茶室にて行った。和の空間とバッハとドイツ音楽、清水研作の作品世界……インタビュー当日のトークを収めた動画では、そんな様々な要素が織りなす雰囲気も味わえるだろう。

インタビュア 和泉まどか

R:清水理恵

――今回のリサイタルは、第1部・第2部と別プログラムになっていますね。両方通しで聴くとかなり充実した世界を体験できそうです。どんなコンセプトで企画やプログラムを考えましたか?


R:ドイツ音楽中心のラインナップを考えました。ピアニストの山本弥生さんはドイツで勉強した人で、アメリカで学んだ私とはまた違った音楽性を持っています。そんな山本さんに伴奏してもらうことになり、それならドイツものを中心にしたら面白いのではないか、と考えました。

いつも私が考えるのは、フルートでおなじみの曲を並べるのではなくて、それ以外で皆さんに興味深く聴いていただけるレパートリーはないかな、ということ。それを念頭に置きながら曲探しをするときが、自分の充実した楽しい時間にもなっています。

今回はシューマン、メンデルスゾーン、シューベルトといった、フルートではあまり馴染みのない作曲家の作品を取り上げます。シューベルトは『「萎める花」による変奏曲』という名曲をフルート作品として遺していますが、シューマンやメンデルスゾーンにはフルートオリジナルの作品がありません。でも、ヴァイオリンやほかの弦楽器、ピアノなどの曲でもフルートで演奏したらきっと面白いだろうと思えるような曲がたくさんあるので、そんな作品の中からこれぞというものを選んでみました。

なかでもシューマンの『お伽噺の挿絵』という曲は、ヴィオラとピアノのための作品であり、フルート用の楽譜も出版されています。どんな曲なのだろうと思って楽譜を取り寄せてみたら、とても素敵な音楽だったんです。フルート曲としてはかなり低音が多用されていて、技術的には結構難しい。弦楽器やピアノの曲を演奏するときには、弦楽器のように、またピアノのように上手く吹けるかということではなく、その曲の良さをフルートの特徴を活かした表現で引き出すことを私は大事にしています。フルートを吹く人に興味を持ってもらったり、オリジナルの楽器奏者がフルートの演奏を聴いて「フルートで吹くとこんなふうに別の良さが出てくるのね」と感じてくださるといいな、と。

――ドイツの作曲家の作品を中心にフィーチャーしていますが、その意図、また演奏する醍醐味はどんなところにありますか?


R:バッハの無伴奏ヴァイオリン作品を軸にして、他の作品を選んでいるということがまず前提としてあります。ピアニストの山本さんに実際に聞いたことはないのですが、今回のプログラムはピアノを弾いていてもきっと楽しいんじゃないかな、と感じるプログラムなんです。一緒にリハーサルをしていても、いろんなアイデアが湧いてきて、たとえ意見が違っても両方のバージョンを試してみて、その結果また新たな音楽が生まれたり……そんなふうに創造の楽しみも膨らんでいます。

――リサイタルでは、バッハの無伴奏チェロ組曲シリーズを終え、現在はヴァイオリン・ソナタ&パルティータシリーズを続けられています。長く続いている一連のバッハシリーズという試みを始めたきっかけは?


R:(フルーティストの)加藤元章さんがチェロもヴァイオリンもアレンジされ、その楽譜を譲っていただきました。全曲をオリジナルの調でフルートで演奏するという試みはこれまでになかったものだと思います。そんな画期的な試みを私もぜひやってみたいと思い、勉強し始めたのがきっかけでした。

いずれも名曲揃いで、バッハを深く勉強する意味でもとても良いと思いましたし、それぞれ1曲通して演奏するとだいぶ演奏時間も長くなります。フルートの作品では、長時間にわたる大作が少なく、ソナタでも30分かかるものはほとんどありません。その点、ピアノや弦楽器の曲にはチャレンジしがいのあるレパートリーが多い。そんな意味もあったのと、大好きなバッハの世界をもっと探ってみたいという気持ちもありました。

一方で、フルートで演奏した時にその曲の良さをちゃんと表現できるのかな、という懸念があったのも確かです。でも、そもそもバロック時代はひとつの作品をいろいろな楽器で演奏していたので、それもありなのではないかと考えました。音域上フルートで出せない音もあるので、そこは変更が必要ですが、オリジナルの調でバッハの作品に触れる素晴らしさや、フルートならではの魅力も伝えられるのではないか――そんなことを思いつつ、バッハを軸に他の作品も紹介していくというリサイタルを、自分のチャレンジとしてやってみようと。チェロ組曲、ヴァイオリン・ソナタ&パルティータがそれぞれ6曲ずつあるので、全12回のシリーズにするというのが当初からのプランでした。

――今回のコンサートはもともと2021年の11月に開催予定でしたが、延期の理由というのが……

R:忘れもしない10月1日でしたが、転んで右手首を骨折してしまいました。さすがに1ヶ月後にコンサートを開くことはできなくなってしまって。骨折した時はひどい痛みでしばらく倒れたまま起き上がれず、瞬間的に「折れたな」とわかりました。やっと起き上がって手を見たら手のひらが手首からずれて付いていて。本当にびっくりしました(笑)。細い骨は欠けて飛んでいたということが、後からわかりました。

その後5週間ギブスをはめて指も動かせない状態で、痛みも続いていたのですが、今は骨もつながっています。ただ筋肉が固くなったりむくんだりして、最近やっと最低音のCをしっかり押さえられるようになりました。7月には、きちんとプロとしての演奏ができると思います。

――ここからまたさらに調整されて、万全の状態で本番を迎えるということですね。


R:ただ治るだけならもう大丈夫なのですが、自分にとってのチャレンジという意味もあるプログラムなので、しっかりと準備を整えたいと考えています。その意味では、7月31日というのは満を持して臨めるタイミング。元の公演を楽しみにしていてくださった方々へのお詫びと、あらためて聴きにきてくださる方への感謝を込めて演奏したいと思います。

インタビュー後半に続く

インタビュー前半(動画)